ネット上のダークパターン(Dark patterns)とは:だましのテクニックに注意する

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更新履歴
2023年12月11日:記述内容の修正
2022年12月1日:書式の一部を修正

タイトルの「ダークパターン(Dark patterns)」は、PCやスマートフォンを日常的に使っている人でもあまり馴染みのない言葉かと思います。

ダークパターンは、インターネット上でごく一般的に使われていますが、人を欺くようなユーザーインターフェースのため、見つけるのが難しくなっています。

日常的にネットショッピングしたり、ウェブサイトの会員登録を頻繁に行っている人は、これから解説する記事を読むと、「あーあのことか」と思い当たるかと思います。

ダークパターンは、企業やECサイトなどが消費者の行動を操作するために使用するユーザーインターフェースの用法です。

本記事では、近年世界的に問題になっているこの「ダークパターン」について、概要や種類、事例などを取り上げて解説いたします。

セキュリティに関する記事については、以下のリンクも合わせてご覧ください。

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1 「ダークパターン」って何だろう?

ウィキペディア(Wikipedia)によると、ダークパターンは、主にウェブサイトなどでユーザーを騙すために慎重に作られたユーザーインターフェースフェイス(UI)であり、「”購入ボタン”よりも定期購入ボタンの方が目立つ配色や大きさになっている」や「登録は簡単なのに退会が非常に面倒である」など様々な例がある。

引用元:ウィキペディア(Wikipedia)

ダークパターンは、利用者の不利益となるようなウェブサイト設計(ユーザーインターフェース)になっていて、特にネット通販サイトなどで多く見受けられます。

場合によっては、消費者自身が気づかないまま、余分な注文をさせてお金を使わせたり、心理的な誘導を煽ったりするようなこともあります。

たとえば、「あと2個」、「在庫残りわずか」、「SALE終了まで 15分」などのあおり表示がされ、焦ってついつい購入したり、購入したあとに、うるさいメルマガがどんどん送られてくる。なんてことは皆さんも一度ならず経験していることと思います

日本では、大半が合法とされているようですが、私達カスタマーやエンドユーザーには迷惑でしかないユーザーインターフェースと感じられます。

日本経済新聞の2021年3月の調査によると、国内主要サイト6割でダークパターンが確認されており、内訳は「メルマガ受信」に関するものが最も多かったそうです。

ダークパターンの改善には消極的な企業が大半で、「赤信号、みんなで渡れば怖くない。」、「あそこがやっているから我が社でやってもいいだろう。」といった風潮が見られるようです。

欧米諸国では、さまざまな規制が強化されていますが、日本の行政や企業のルール規制が追いついておらず、まさに野放し状態です。

当面はユーザー自身が「騙しのテクニック」にしっかり対応する必要があるかと思います。

2 ダークパターンの種類と事例

ダークパターンの種類は、大別すると十数種類になります。

  1. ゴキブリ捕獲器(ゴキブリホイホイ)(Roach Motel )
    サービスに簡単にサインアップや登録はできるが、キャンセルや退会には苦労する。

    たとえば、解約や退会したいと思っているサービスの解約や退会方法が複雑でわからない。あるいは電話が繋がらない。
    この事例は、Eコマースやストリーミングサービスなどでよく見かける手口です。

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    引用元:独立行政法人 国民生活センター


  2. 価格比較防止(Price Comparison Prevention)
    ネットショッピングサイトが、自分のサイトで販売する商品の価格比較を難しくしている。

    たとえば、お得な商品と強調しながら、比較対象を表示しない。
    ユーザーが商品の価格比較をして、安い商品を選択できたにもかかわらず、その機会を失ってしまう。
    以下の例では、りんごの個数と重量を表示している。

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    引用元:darkpatterns.jp


  3. 視覚的干渉(注意そらし)(Misdirection)
    ユーザーインターフェースによって、意図的にユーザーを別のものに注目させ、他のものから目をそらさせる。

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    あるいは、商品購入がいつの間にか「定期購入」「▢」にチェックマークが入っていて、翌月も同じ商品が送りつけられた。

    商品購入手順の最終段階で、「メルマガ希望」にチェックマークが入っていることに気づかず、あとから大量のメルマガが届く。

    以下の例では初期設定ですでにチェックマークが入っており、画面を一番下までスクロールしないと気がつかない。

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  4. 偽のカウントダウン(Urgency)
    いわゆるあおりで、ユーザーを焦らせることで商品の購入を促す。
    たとえば、「あと30分で受付終了」、「残りあと○個です」、「いま○人が閲覧中」などのカウントダウンを表示する。

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    以下の事例は宿泊予約サイトでは日常的に見ることができます。

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  5. 偽装広告(Disguised Ads)
    広告などのクリックを誘うため、閲覧中のサイトコンテンツであるかのように偽装した広告など。
    たとえば、ボタンの大きさや色を強調表示してユーザーの判断を惑わせ、目的以外のウェブサイトに誘導したりする。

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  6. おとり商法(Bait and Switch)
    購入できない商品や、無料の製品、サービスなどを過大に宣伝しておき、売り切れたなどど言って、宣伝している商品などと同様の他の価格の商品を宣伝する。

  7. 隠されたコスト(Hidden Costs)
    購入手順最終段階で、配送料、税金、サービス料などの追加料金が発生する。
    たとえば、配送料などの手数料が分かりづらく、最後の確認ページまで表記されない。

  8. 強制開示((Privacy Zuckering)
    必要のない、クレジットカード情報や住所、電話番号などの個人情報を要求される。
    FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏にちなんでつけられました。

  9. 強制的な継続性(Forced Continuity )
    たとえば、ストリーミングサービスの無料トライアルが終了すると、事前の告知もなく自動継続させる。

  10. ひっかけ質問(Trick questions )
    判断に困るようなまぎらわしい質問やチェックボックスなどで、ユーザーが不利になるような選択をさせる。

    たとえば、質問内容を軽い気持ちで呼んで「はい」を選択すると、実は、予想と違う質問に「はい」と回答することになる。

  11. こっそりカゴに入れる(Sneak into Basket )
    ユーザーの同意を得ることなく、ショッピングカートに商品を追加する。

  12. 羞恥心や罪悪感の植え付け((Confirmshaming )
    ウェブサイト側からの提案を断ることは、ユーザー自身に罪があるように羞恥心や罪悪感を与える。

    たとえば、サービスを断る場合、ユーザーの人格を貶めるような文言を表示したり、解約することに罪悪感をもたせる。

    ダークパターンの画像
    引用元:@cocu_44さん


  13. なりすましスパム(Friend Spam )
    「友人を探す」ようなふりをしてメールやSNSのアクセス許可を求め、実際にはアクセスした連絡先に「ユーザーから」という名目でスパムを送ること。

3 ダークパターンの具体的事例

noindexタグの埋め込み事例

NTTドコモとKDDIが、検索エンジンで検索した際に、解約手続きページが表示されないように、「noindex」タグをHTMLに埋め込んだ悪質な事例がありました。
なお、2021年1月20日にタグは削除されています。

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引用元:総務省事務局

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退会までに十数ページかかる複雑な手順の事例

動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」はウォルト・ディズニー・ジャパンとNTTドコモが運営する、動画配信サービスですが、退会完了までに十数ページ要したとJ-CASTニュースが報じています。(2021年7月11日)

ダークパターンの「ゴキブリホイホイ」の典型で、ここでもNTTドコモが顔を出しています。

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引用元:j-CAST.com

その他のダークパターンの事例

JTBの宿泊予約サイト「るるぶトラベル」は、空きがあった場合でも予約プランの大半で、「もうすぐSOLD OUT」と表示していたとのことです。
現在の表現は「空き室あり!」に変わっています。

Amazon JAPANとサントリーウエルネスは初めから「定期購入」が選択されていました。

DHCとQVジャパンでは会員退会方法を電話に限っていたそうです。

引用元:日本経済新聞 2021年3月27日

これらの事例は日本ではいまだに合法だそうです。

4 ダークパターンの回避策

現在の日本では、解説してきたダークパターンが合法であり、企業や行政の取り組みも積極的とはいえません。

まず、ダークパターンに関する知識を身につけ、自分や家族の身を守りましょう。

具体的な回避策として、面倒でも規約などをしっかり読んで「同意」できれば購入や契約をしましょう。
少しでもおかしな文言があれば、サービスの加入や物品の購入などは止めましょう。

サービスなどの退会方法が分からない場合は、諦めないで検索エンジンでじっくり調べましょう。親切なネットユーザーが分かりやすく解説しています。

サービスや物品などを購入する際は、時間のある時に落ち着いて取り掛かりましょう。
表示画面の左右や上下を最後までスクロールして、チェックボックスの状態なども確認しましょう。

サイトのカウントダウンなどの「あおり」に惑わされ、慌てふためいて契約してはいけません。相手の思う壺にはまります。

不愉快な思いをしないで、豊かで快適なネットライフを楽しみたいものですね。

以上で「ダークパターン(Dark patterns)はちょっとヤバいぞ!注意が必要です」の解説を終わります。


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