インターネットの世界では、個人情報などのデータ(プライバシーのデータ)が収集されるのは日常茶飯事のことです。
Windows 10/11 パソコンをお使いの人は、プライバシーを脅かす可能性のある標準設定が多数あることをご存じでしょうか。
例えば「位置情報の追跡」や「アプリの権限」などがそれですが、自分の個人情報が第三者に把握されるのは気持ちが良いものではありません。
幸いなことに、Windows PCの設定によりプライバシー保護を大幅に強化して、個人情報のデータ収集を軽減する設定方法があります。
本稿では、Windows 11によるプライバシー保護を強化するための設定方法について解説いたします。
解説に使用したOSは「Windows 11 Pro 24H2」です。
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今回の設定の見直しまたは変更は、以下に示す6項目について実行します。なお、これら項目の一部はWindows 11のインストール途中でも表示され、その際に無効化した場合は、本設定の画面でも無効になっています。
- アプリの権限設定手順
- OneDriveとの同期設定手順
- クリップボードの設定手順
- Microsoft アカウントの設定手順
- 診断とフィードバックの設定手順
- パーソナライズ広告の設定手順
「OneDriveとの同期設定手順」以外は、すべてWindows 11の設定アプリから実行します。設定アプリの開き方は、以下に示す見出し「1 アプリの権限を設定する手順」の「位置情報」手順①に準じます。
1 アプリの権限を設定する手順
Windows 11 はデフォルトでアプリに多くの権限を付与しています。そのためプライバシーの保護が脆弱になります。
また、意図しない権限を付与してしまう可能性もあります。そのような事態を回避するために、特定のアプリにアクセス権を許可しないようにアプリの権限を見直します。
アプリのアクセス許可の設定は26項目あります。すべてを説明することは難しいので、一例として「位置情報」に対するアプリのアクセスを無効化する手順をご紹介いたします。
位置情報以外の項目も操作手順は同じです。
アプリの「位置情報」へのアクセスを無効化する手順
Windows 11では位置情報はデフォルトでオンであり、Microsoft アプリやサードパーティのアプリが現在地を把握できるようにしています。
このようなデータ収集に不安がある場合は、位置情報サービスを完全に無効化してデータ収集を停止します。
また、副次的な結果としてノートパソコンやタブレットのバッテリー消費を抑えることができます。
位置情報サービスの無効化手順を以下に示します。
- タスクバーの「スタート」ボタンを右クリックして、クイックリンクメニューの「設定」をクリックします。
- 設定画面が表示されます。
左ペインの「プライバシーとセキュリティ」をクリックします。 - 画面をスクロールダウンして、右ペインに表示された「アプリのアクセス許可」欄の「位置情報」をクリックします。
- 位置情報設定画面が表示されます。
「位置情報サービス」を完全に無効化する場合は、左のトグルスイッチをクリックします。 - 位置情報サービスオフの確認ダイアログが表示されます。
「オフにする」ボタンをクリックします。 - 位置情報サービスは完全に無効化されます。
- アプリごとにアクセス許可の設定を行う場合は「位置情報サービス」と、「アプリに位置情報へのアクセスを許可する」のトグルスイッチはオンのままにします。
次に、位置情報へのアクセスを必要としないアプリはオフにし、アクセスがどうしても必要なアプリはオンにします。 - 以上で設定変更完了です。
2 OneDriveとの同期を設定する手順
Windows 11のOneDrive同期機能は、設定や個人用ファイル、アプリケーション データ、環境設定をOneDriveアカウントに保存するため、プライバシー上の問題となる可能性があります。
Microsoftによる利用状況に関する診断データが収集されており、永続的なトラッキングにつながる可能性もあります。これを防ぐには、OneDriveアカウントとWindowsのリンクを解除します。
これにより、パソコン上のファイルとインターネット上のファイルが同期されなくなります。
なお、OneDriveを恒常的に利用している場合は、本設定を行う必要はありません。
- タスクバー右にある通知領域に表示されている「OneDrive」アイコン(雲)をクリックします。
アイコンが表示されていない場合は「∧」(システムトレイ)をクリックして確認してください。 - 右上の「歯車」アイコンと、メニューの「設定」を順番にクリックします。
- OneDriveの設定画面が表示されます。
左ペインの「アカウント」と、右ペインに表示された「このPCからリンクを解除する」を順番にクリックします。 - リンク解除の確認ダイアログが表示されます。
「アカウントのリンク解除」ボタンをクリックします。 - OneDriveの同期は解除されて、通知領域の「OneDrive」アイコン(雲)に斜めの打ち消し線が入ります。
「OneDriveを設定」という画面が表示された場合は、画面右上の「×」をクリックして画面を閉じます。 - 以上で設定完了です。
3 クリップボードを設定する手順
クリップボードは、コピーしたアイテム(テキストや画像など)を一時的に保存し、簡単に貼り付けられる便利な機能です。
キーボードショートカットの「Windowsロゴ + V 」で表示されるクリップボード履歴は、コピーした複数のアイテムを保存するため特に便利です。
しかし、クリップボードのデータはMicrosoft のサーバーやデバイス間で同期されています。デバイス間のクリップボード履歴を無効化して同期をオフにします。
- Windows 11の設定アプリを開きます。
- 設定画面が表示されます。
左ペインの「システム」をクリックします。 - 画面をスクロールダウンして、右ペインに表示された「クリップボード」をクリックします。
- 右ペインにある「デバイス間のクリップボード履歴」のトグルスイッチをオフにします。
- 以上で設定完了です。
4 Microsoft アカウントを設定する手順
Windows 11 をインストールする際は、 原則としてMicrosoft アカウントでサインインする必要があります。
MicrosoftアカウントをWindowsにリンクすると、すべてのデバイス間で設定を同期できたり、Microsoft Storeを利用できるなどの利点があります。
しかし、Microsoft アカウントは、利用状況のデータがMicrosoftに送信されて、個人情報と紐付けされます。
ローカルアカウントに切り替えることで、このような事象は回避できます。ただし、一部のWindows機能(デバイス間の同期、Windowsバックアップなど)や、クラウドサービスが利用できなくなるなど、多くの利便性は失われます。
Microsoftアカウントからローカルアカウントに切り替える手順については、以下の関連記事をご参照ください。
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5 診断とフィードバックを設定する手順
Microsoftでは、Windows OSの改善を目的として「診断データ」を収集しています。このデータには、ハードウェアやアプリケーションの使用状況、Windows機能の使用状況、パフォーマンス データが含まれます。
データ収集を完全に無効にすることはできませんが、以下に示す手順で制限することは可能です。
- Windows 11の設定アプリを開きます。
- 設定画面が表示されます。
左ペインの「プライバシーとセキュリティ」と、右ペインにある「診断とフィードバック」を順番にクリックします。 - 右ペインに表示された「オプションの診断データを送信する」のトグルスイッチをオフにします。
- 右ペインの最下部にある「診断データの削除」をクリックします。
下に表示された「削除」ボタンをクリックします。
この操作でMicrosoftによって収集された診断データは消去されます。 - 以上で設定完了です。
6 パーソナライズ広告を設定する手順
パーソナライズ広告とは、閲覧履歴や検索履歴、アプリの使用状況などの個人情報を活用して、ユーザーにとって関連性の高い広告を表示する仕組みです。
これはプライバシーを脅かす事象の一つであり、ユーザーの明示的な同意なしに実行されています。
しかし、設定から4項目を無効化することで、ユーザーの関心に合うような広告は表示されなくなります。
ただし、これを無効にした後も、ユーザーの興味を引かない、関連性の低い広告が表示される可能性はあります。
パーソナライズ広告を無効化する手順を以下に示します。
- Windows 11の設定アプリを開きます。
- 設定アプリが表示されます。
左ペインの「プライバシーとセキュリティ」と、右ペインにある「推奨事項&オファー」を順番にクリックします。 - 「推奨事項&オファー」設定画面が表示されます。
以下に示す4項目のトグルスイッチをオフにします。
「パーソナライズされたオファー」
「スタートメニューと検索結果を改善する」
「設定の推奨事項とオファー」
「広告識別子」
以上で「Windows 11の操作:プライバシー保護を強化するための設定方法」に関する解説を終わります。
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